行政書士の佐藤昭一です。昨年、兵庫県の斎藤元彦知事の元職員からの告発文書への対応が、公益通報者保護法に違反していたのではないかとの議論について、新聞報道やSNSで、法律の解釈の違いにより違反している派と違反していない派の両論渦巻いて、自分の主張の正当性についてお互いに意見をぶつけ合っていました。(まだ議論は収まっていないかもしれませんが・・・)
そもそも公益通報者保護法とは、どのような法律なのか、基本的な内容について、私の知りうる範囲内でお話しさせていただきます。
◯公益通報者保護法
①法律の目的
・国民の生活の安全・安心を脅かす法令違反の防止と通報者を保護し、通報の活性化を図ることを目的としています。
②対象者
・労働者(正社員、派遣社員、アルバイトなど)、退職者(通報前に1年以内)、役員(取締役など)が対象となります。
③対象となる通報
・事業者内部の法令違反(犯罪行為や過料に該当する行為など)が対象となります。
④通報者の保護内容
・通報者が通報により不利益を被らないように解雇の無効、降格・減給などの取扱いを禁止する。
・通報者を特定する情報の漏洩を禁止する。
・行政機関や報道期間などの外部に通報した場合(外部通報)も保護の対象となります。
⑤内部通報窓口の設置と内部通報制度の整備
・301名以上の従業員がいる事業所は内部通報窓口を設置する必要があります。その後、2020年の改正により従業員300名超の事業者に対して制度導入が義務化されました。
⑥2025年の法改正の主な内容について
・不正を内部通報したことを理由に従業員を解雇や懲戒処分にした個人や法人に刑事罰を科することになります。
個人の場合・・・6ヶ月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金
法人の場合・・・3000万円以下の罰金
・通報者が民事裁判を起こした場合は、事業者側が通報と処分には関係がないことを立証する責任を負うことが明記されます。
・事業者が、内部通報者の窓口の担当者を配置しなかった場合、国が立ち入り検査をすることができるほかに、事業者が命令などに従わなかった場合には、30万円以下の罰金が科されます。
◯最後に
今回は、公益通報者保護法についてお話ししました。この法律については、まだまだ改善点が残っていると個人的には思っています。関係省庁の皆さんには、法律のアップデートをお願いしたいと思います。